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ハメット
Hammett


制作年 1982 Scene1
邦題ハメット
原題Hammett
ジャンルドラマ
時間 97分
フイルム 35mm
カラー カラー
製作国
製作会社ゾーイトロープ・スタジオ
原作ジョー・ゴアス<Joe Gores>「ハメット」
製作製作総指揮:フランシス・フォード・コッポラ<Francis Ford Coppola>
製作:フレッド・ルース<Fred Roos>/ロナルド・コルビー<Ronald Colby>/ドン・ゲスト<Don Guest>
監督ヴィム・ヴェンダース<Wim Wenders>
脚本ロス・トーマス<Ross Thomas>/デニス・オフラハティ<Dennis O'flaherty>
撮影ジョセフ・バイロック<Josef Biroc>/フィリップ・H.ラスロップ<Philip H. Lathrop>
音楽ジョン・バリー<John Barry>
出演フレデリック・フォレスト<Frederic Forrest>(ダシール・ハメット)/
マリル・ヘナー<Marilu Henner>(キット・コンガー スー・アラバマ)/
ピーター・ボイル<Peter Boyle>(ジミー・ライアン)/
ロイ・キニア<Roy Kinnear>(ハーゲンドン弁護士)/
イライシャ・クック・Jr.<Elisha Cook Jr.>(イーライ)/
R.G.アームストロング<R.G.Armstrong>(オマラ警部補)/
リチャード・ブラッドフォード<Richard Bradford>(ブラッドフォード刑事)/
マイケル・チョウ<Michael Chow>(フォン)/
シルヴィア・シドニー<Sylvia Sidney>(カメロン夫人)/
ジャック・ナンス<Jack Nance>(ゲイリー・ソルト)


■ 内容

Scene2 1928年、サンフランシスコ。有名な探偵社ピンカートン社の腕利き調査員だったダシール・ハメットは自らの経験を生かして小説を書こうと、小説家に転身したばかり。今もようやく『ブラック・マスク』誌のために短篇をタイプライターで打ち終える。そこへピンカートン時代の仲間だったジミー・ライアンが訪ねて来る。クリスタル・リンという中国娘を探しに来たのだが、チャイナタウンは不案内だから協力してくれという。ハメットは断るが、原稿を投函するため、ライアンと部屋を出る。二人はチンピラが尾行していることに気づき、チャイナタウンでまこうとするが、爆竹と龍の祭りに巻き込まれる。ライアンが発砲したため騒ぎが大きくなり、ライアンを見失った上、原稿もなくしてしまう。また、自分もリンを探しているというゴシップ屋のソルトにつきまとわれ、事件に巻き込まれていく。
ソルトによれば、ファンというチャイナタウンのボスが中国から12~13歳の少女を買って来て娼婦をさせている。リンは逃げ出した娼婦らしい。ライアンが密かにハメットに残した手がかりは破られた新聞記事で、材木王カラハンの自殺について書かれていた。だが、実はカラハンの誌が自殺でなかったことを聞き出す。
ハメットがアパートに帰ると、リンがいる。しばらくかくまって欲しいという。ハメットがファンの元にライアンを取り返しに行く間に、リンは顔をつぶされた状態で殺されてしまう。犯人と疑われ、連行された警察で、リンの出演するハードコアポルノを見せられる。ソルトから奪ったノミ屋の券の裏側に、サンフランシスコの大物の名前と金額らしい数字が列挙されている。ソルトの家を探し出すと、そこはポルノ映画が撮られたスタジオだった。ハメットは偶然ソルトが殺される現場に立ち会ってしまう。
ようやく事件の全貌がつかめたハメットが豪華な邸宅へ出かけた。そこにはサンフランシスコの経済を動かす大物が集まっていた。株で失敗したカラハンがリンと組んでポルノ映画を撮影し、彼らを恐喝した。脅迫者は100万ドルと交換にネガを渡すと言う。その運び屋にハメットを指定してきた。ハメットを迎えるのは死んだ筈のリンとライアン。ライアンはカラハンの死後、リンのパートナーに収まっていた。そしてリンをも裏切り、金を独り占めしようとするライアンをリンが撃つ。リンはハメットを相棒にと誘うが、それを無視し、黙ってリンを行かせる。
そして、ハメットは今回の事件を思い出しながら小説を書くのだった。

■ 感想

1920年代のチャイナタウンのセットが異様な雰囲気で組まれている。まるっきり舞台の書き割りのようだ。カラフルでムードたっぷりのチャイナタウン。ここでハードボイルドな犯罪劇が繰り広げられる。しぶくてダンディなハメットと小悪魔なリン、それから多数のうさんくさい男たち。見て損はしないが、特にオススメする気はない。

実際、ヴェンダースにとって「ハメット」とは何だったんだろう?あまりにも長い時間この映画にかかわった。そのおかげでたくさんのことを考えさせられ、合間に2本の映画を撮影した。1本は映画監督の死を扱ったセミキュメンタリーで、もう1本は映画における物語の死を扱った小作品である。そして、次の作品は「パリ、テキサス」なのである。

出版前のゴアズの「ハメット」を読んで映画化しようと、コッポラの右腕のプロデューサーでゾーイトロープ・スタジオのフレッド・ルースは最初はニコラス・ローグに依頼したがタイミングが合わずはずれる。また、トリュフォーに依頼して断られたりしている。結局「アメリカの友人」を見てヴェンダースに決めた。
第一稿はゴアス自身によるもの。撮影開始直後にコッポラの意向で撮影中断。
トーマス・ポープがヴェンダースと協力して第二稿を書くが、これを撮影前に感じをつかみたくて音声部分をラジオドラマ化したらコッポラが気に入らない。
第三稿をデニス・オフラハティに書かせている間、ヴェンダースは「ニックス・ムービー」を撮影する。撮影は再開され、ラスト10分を撮れば終わり、というところで、当時の妻ロニーがしきりに介入して来たことを嫌ったコッポラがまたも撮影を中断させた。この時のバージョンではロケが中心だった。次のバージョンではロニーの配役はなかった。
第四稿をロス・トーマスが書いている間、ヴェンダースは「ことの次第」を撮影する。今度はほとんどがスタジオで撮影され、最初のバージョンはまるで使えずに完全取り直し。猛スピードで撮影され、編集が行われた。
実際、そこまで苦労しただけの収益をあげられたわけではなかった。だがまぁ、ともあれ、経緯を聞くにつけ、よく完成したなと思う。またこれだけ困難な状況の中で、自分のものとして恥ずかしくはない結果を出すようになったのだから、ヴェンダースにとってはさまざまな困難を乗り越え、一流になる過程として必要だったのかもしれない。


1985年12月 東宝東和配給
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