短編映画 - vol.3
ナイト&デイ
Night&Day
1990年 プロモーションビデオ 全90分 カラー 米=仏=英
製作会社 | パレス・プロ・フォー・キング・コールInc/BGMビデオ/カナル・ブリュス/チャンネル4/クリサリス・レコード/デイビッド・ソルツ=エンタテイメント・サービス |
製作 | ヨランデ・ダービシャー |
監督 | ヴィム・ヴェンダース<Wim Wenders> |
撮影 | ロビー・ミュラー<Robby Müller> |
編集 | ショーン・マクノートン |
音楽 | 使用曲:コール・ポーター「Night & Day」 |
出演 |
U2 |
■ 内容
「RED HOT & BLUE : Tribute to COLE PORTER」というCDのビデオクリップの中にU2の「Night & Day」が収録されており、これはヴェンダースが演出したもの。このCD/ビデオはコール・ポーターのナンバーを現代の有名ミュージシャンがカバーする企画もの。
日本でもビデオ発売されたが、すでに絶版。CDのUS盤はまだ販売されている。
■ 感想
Night and Dayは大好きだがU2の演奏がよいとはあまり思えない。ただ、プロモーションビデオとしては面白いものが出来たと思う。
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ビデオ発売のみ
アリーシャと熊とストーンリング
Arisha,The Bear,and the Stone Ring
1992年 ドラマ 29分 35mm カラー 西独
■ 内容
夜のベルリン。熊のぬいぐるみを着た男が町を出る決意をして歩く。男は車に乗ったロシア人母娘に出会い、運転手として同乗することになる。ガソリンスタンドにいたサンタクロース姿の男もともに旅に出ることになる。
4人が海岸に着くと、娘のアリーシャが指輪のような形をした意志を見つける。母娘はサンタクロースと別れ、次に熊と別れる。
■ 感想
池袋アムラックスシアター第三弾としてボディソニックで上映された20分の短篇。バブルっぽいなぁとも思うが、新しい試みではあった。映像に合わせて香りの出るアロマシステムとボディソニックのシートがあって、五感で映画を体感するという映画館である。ヴェンダースがこの映画館向けに製作した短篇映画。
映画館の未来というものに対し真摯に考えていたヴェンダースとしては依頼されたら真面目に製作してしまうだろう。しかし、何故ヴェンダースに依頼したのだろうか。観客はもっと一般的なストーリーでわかりやすい体感か劇場型というかイベントを求めているだろうに。はっきり言って向いていなかったのでは?と思う。
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1994年10月5日~東京池袋アムラックスシアターで1年間無料公開
リュミエールと仲間たち
Lumiere et compagnie
1995年 ドラマ 53秒 仏
■ 内容
19世紀末、世界で初めてリュミエール兄弟によって製作された手回しカメラ「シネマトグラフ」を使い、名だたる映画監督たちが「自分のリュミエール映画」を撮影する。デヴィッド・リンチ、テオ・アンゲロプロス、ジャック・リヴェット、アッバス・キアロスタミ、スパイク・リー、ピーター・グリーナウェイ、ジェイムズ・アイヴォリーら世界の著名な映画監督40名が、シネマトグラフを使って独自の映像を披露する。但し、制限時間は52秒以内、同時録音は不可、テイクは3回までという厳しい制限が課される。
ビデオ発売時のタイトルは「キング・オブ・フィルム/巨匠たちの60秒」。DVD製作元の学研のページ。
ヴェンダースはベルリンの工事現場で天使を撮影する。オットー・ザンダーとブルーノ・ガンツがしばらく立ち、また去っていく。
10ミニッツ・オールダー 人生のメビウスより「トローナからの12マイル」
Ten Minutes Older - The Trumpet : Twelve Miles to Trona
2002年 ドラマ 11分 35mm カラー 英=独=スペイン=オランダ=フィンランド=中国
製作会社 | オデュッセー・フィルムズ/マタドール・フィルムズ/ロード・ムーヴィーズ・フィルムプロダクション |
製作 | 製作総指揮:ニコラス・マクリントック<Nicolas McClintock>/ナイジェル・トーマス<Nigel Thomas>/ウルリッヒ・フェルスベルク<Ulrich Felsberg>/ 製作:サムゾン・ミューケ<Samson Mucke>/パスカル・レスター<Pascal Leister> |
監督 | ヴィム・ヴェンダース<Wim Wenders> |
撮影 |
フェドン・パパマイケル<Phedon Papamichael> |
編集 |
マチルダ・ボヌフォア<Mathilde Bonnefoy> |
出演 |
チャールズ・エステン<Charles Esten>/アンバー・タンブリン<Amber Tamblyn> |
■ 内容
砂漠の中にある街。車に乗った男がある建物に到着する。そこは診療所だが、「診療は月曜から木曜」と書かれているのを見て男は落胆する。道路標識に「リッジクレストまで12マイル」とある。時間は4時ちょうど。男は車を発進させる。
男は上着を脱ぎ、窓をあけ、幌を上げる。それでも暑くて仕方がない様子。風景がゆがんで来る。「リッジクレストまで9マイル、トローナまで12マイル」の標識。携帯電話に妻から電話が入り、「リッジクレストの病院の電話番号を調べてくれ」と頼むが圏外になって切れてしまう。
男は一人話し始める。一人で人を待っている間、机の上にクッキーがあったので全部食べてしまった。ところがそのクッキーはドラッグが混入されているものだったらしい。薬物の過剰摂取のため胃を洗おうと診療所に来たのだが休みだったのだ。なんとか次の病院まで行こうと絶望的な努力を続けるが、目が霞んで幻覚を見る。バックミラーには老いた自分の姿が。時計は4時7分。ついに男は「神よ助けて下さい。」と言って車を止める。
そこへちょうどワゴン車が通りかかって止まる。なんとかドアを明けると中に若い女性がいた。「リッジクレストに病院はある?」「チャイナレイクにあるわ。」男は車に乗り込んだが、心臓の鼓動はますますひどくなり、幻覚が見える。隣の女性が年老いて見える。そしてついに意識を失う。
病院で目が覚めると、ここまで連れて来てくれた若い女性がいる。「奥さんに連絡したわ。すぐ来るって」「名前は?」「ケイト」「ありがとう。運転うまいね」「始めて一週間よ」
■ 感想
10分間の「イージー・ライダー」という印象。10分間という時間を「生死を分ける10分」として描いた。幻覚の映像は確かに目新しいものではないが、60年代にヴェンダースが実際に自分が見た幻覚を元に撮影されたそうだ。
下手にひねらず、制約を素直に生かしたと思う。得意の砂漠地方の映像を元にして、ちゃんと「ホっとする」ような落ちまでつけて、とてもヴェンダースらしい。たった10分の映画でも自分の刻印を押すことができるのだから、巨匠の一人に加えてもらってふさわしい。
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2003年12月13日 日活配給
2002年カンヌ国際映画祭出品
Matador Pictures, Odyssey Films, Road Movies Filmproduktion